菌糸カワラ材

自然界でオオクワガタは、カワラタケなどの白枯れ腐朽菌によって朽ちた広葉樹に好んで産むということから、人工的にカワラタケ菌を植菌し、材産み種の好む産卵材として完成させたものです。

そのため菌糸カワラ材を使って産卵セットを組むことで、メスの本来持つ産卵欲を刺激し、産卵準備の整ったメスにスムーズに産卵を促すことができます。結果として、より確実に、そしてより多くの産卵をさせることを目的としております。

期待をこめてセットしても結局産まずに時間を無駄にしたという経験ありませんか？

シイタケ菌で朽ちたホダ木を産卵用の材として使われることが一般的ですが、シイタケ栽培の副産物として出る廃材をクワガタの産卵用として利用しているのが現状でして、これはあくまでも代用でしかありません。特に外産クワガタなどの場合、野外ではこのような材には産む習慣がないため、一部の種において飼育下でもどうしても一般材では成果が上がらない場合があります。

場合によっては、せっかく入れた産卵木も産卵床と認識してくれず、セットして１〜２月後に期待して材割をしてみたら幼虫が一頭も出てこないという結果にもなりかねませんし、こうなればそれまでに費やした時間は無駄になり、何より期待が大きければ大きいほど落胆も大きくなります。

そんな中、野外での産卵環境により近づけるためカワラタケ菌を植菌し、産卵材としてメスが好む材に仕上げたものが菌糸カワラ材です。 国産オオクワガタ・台湾オオクワ・中国ホーペ・グランディスなどをはじめとする材産みをする種の場合、一般材との産卵比較実験では明らかに菌糸カワラ材のほうに産卵する個体が多く、また産卵率・産卵数も確実に上がります。最近人気のオウゴンオニクワガタやタランドゥスツヤクワガタなどでも十分効果が上がるという報告を多くいただくようになりました。

菌糸カワラ材は一般材に比べると価格が高いという点はあり ますが、菌糸カワラ材でセットを組むことにより、より確実に、そして数多く産卵させることができ、価格面でのデメリットを補うのに十分な成果をあげることができるでしょう。

クワガタ成虫はカブトムシ成虫より長く生きますが、成熟し産卵させることができる期間はせいぜい２〜３シーズンです。あまり無駄に遊ばせる期間はありません。
この短い期間内でより確実に産卵させ子孫を残してあげられるかどうかは、ブリーダーとしての腕の見せ所であり飼育の楽しみでもあります。特に大事にしている虫などは、菌糸カワラ材を使って、めいいっぱい産卵させてあげてみてはいかがでしょうか。

当店の菌糸カワラ材は、実際の自然界から、よりクワガタの好むカワラタケ品種を採取・選抜・培養し植菌した、産卵させることに１００％特化した、植菌産卵材です。

（１） ご購入いただいた状態。このまましばらく保存が可能で、時間の経過とともに菌がなじんできます。
（２） ご使用になる場合は袋から出し、まわりの菌糸体をはぎます。
（３） さらに材の皮をはぎます。皮ははがしやすく、ガバッとすぐにはげます。

参考：　材を覆うカワラ菌床をほぐして、セットの際に埋め込みマットに多少ブレンドさせると、産卵ケース内全体がカワラ菌に包まれ、♀の産卵欲をよりいっそう刺激します。

菌糸カワラ材はあらかじめ適度な水分を含んでおりますので、ご使用いただく際は加水をする必要はございません。皮をむきそのままセットすることができます。

菌糸カワラ材は長さ１４cm、径は約８〜１０cmで、目安として小ケースで１本、中ケースで２本、大ケースで３〜４本の使用となります。上の画像は中ケースでの２本セット例となります。

材のまわりに埋め込みマットを敷き詰め、その上に転倒防止のため材のきれっぱしなどと、高タンパクゼリーを６〜１０個おきます。最後にメスを入れ、セットは完了。

押入れなど昼でも暗いところに入れ、３週間〜４週間、産卵完了を待ちます。昼間も暗い場所に保管した場合、昼夜とも産み続けますので、３週間程度で一通り産卵を終えます。

また気合を入れて産卵させたいときは、菌糸カワラ材とカワラタケ菌糸ブロックのコンビネーションで産卵セットを組みます。画像は大ケースを使用。

菌糸カワラ材をかじり始めたメスは、やがて隣接するカワラタケ菌糸ブロックにも穿孔していき、坑道を伸ばしながら次々に産んでいきます。

カワラタケ菌糸ブロックのほうを好んで産卵しているような場合は、あまり1つのブロックで産ませ続けるのではなく、ある程度の間隔をおきながら次々にブロックのみを交換していったほうがいいようです。この場合、思った以上に幼虫の数が取れてしまう場合がありますので、ある程度産ませたらセットからはずすようにします。

カワラタケ菌糸ブロック内で孵化した幼虫は、摂食当初から菌糸を摂取できるため、今後サイズを狙う上では非常に素質ある初２令を採取できるということになります。（一般材とカワラタケ菌糸ブロックから割り出した幼虫を比較した場合、それぞれの頭幅を含めたサイズの差は歴然です。）

またこれらの産卵セット法はカワラ菌により刺激されたメスに、半ば強制的に数多く産卵させることになるため、産卵後のメスは極端に体力を消耗します。連続で産ませ続けることは避け、合間合間で瓶など狭い入れものに高タンパクのゼリーやバナナなどとメスを入れ、1週間ほど集中的にエサを食べさせて体力回復を計ってください。

皆さんは成虫飼育において、ある程度でも計画に沿った管理をした上での産卵セットを組んでいますか？
羽化してからある程度経過したからといって、一緒にしておけばいずれ産むということを期待して、オスメスを交尾も確認せずに産卵セットに放り込んでしまったりしていませんか？

まだあまり経験のない方であれば手っ取り早いし、間違っている方法ではないのでこれでもいいのですが、ある程度経験をつんできたら、効率の面からも、また生体のためにも、ある程度計画に沿ったブリーディングを心がけるというのもいいかもしれません。

計画的なブリーディングとは、その個体が以下の大まかな区分のどの位置に今いるのかということを把握し、そのための適切な管理をするということです。

　・今は羽化後の熟成期間なのか
　・ただの管理飼育期間なのか
　・ブリーディングへむけての調整期間なのか
　・産卵期間なのか
　・越冬期間なのか

飼育者自身がこれをしっかり把握し、そのための適切な環境管理をしない限り、産卵セットを組んでもうまく産んでくれなかったり、冬になっても越冬してくれなかったりと、思うようなコントロールができなくなります。

特に、せっかく産卵セットを組んでもうまく産卵してくれない場合が多い、などといった方はこの点を考えた上での計画的な管理ブリーディングを心がけると、うまくいくかもしれません。

うまく産卵させることができた人と同じようにセットを組んだのに、なぜ自分の場合だけ産まないのだろう？
値段の高い材も使った。ケースも大きいものを使って贅沢にセットした。設定温度も完璧だ。でもなぜ産まないのだろう？それどころか眠ってしまってえさを食べにも出てこない。なぜだろう？

こういう経験を多くされるといった方はおりませんか？
こういうケースの場合、とかく産卵セットの状況ばかりに目がいってしまいがちですが、産卵セットを組むまでのメスの管理に目を向けてみると、そこに改善しなければいけない点があったかもしれません。

産卵を成功させるためには、産卵セットを組んだあとに産んでいるかどうかをいちいちチェックするのではなくセットを組む前の段階での、産卵させるためのメスの計画的な管理飼育と、コンディションの仕上がり具合を注意深く観察することこそが非常に重要になります。

産卵させるためのメスの状態作りには他にもいくつかありますが、最も基本的なことは次の３つ

　１．羽化後一定の期間が経過している（オオクワガタであれば1度冬越し）
　２．最低３夜３回のハンドペアリングにて交尾を確認　（ヒラタは１回）
　３．交尾後１〜２週間の間、小さなケースで単独管理中にエサをしっかり食べていることを確認

そう、これだけ。なぁ〜んだ。そんなの知ってるよ。と思う方も多いと思いますが、実はこれが結構で守られないまま産卵セットに持ち込んでしまっている方が多いんです。

おまけでもうひとつ付け加えるとしたら、越冬する種に関しては冬には低温下で管理し、必ず越冬させるようにしましょう。メリハリが大事です。
冬場もヌクヌクした温度下でエサを食べているようでは、シーズンに入っても期待通り活発に産卵することも少ないかもしれません。これは一般に「体内時計」や「生物時計」などと呼ばれる、シーズンを通して一定の周期をもつリズムがクワガタの体内に備わっているためです。
このもともと持つ体内にセットされた時計=バイオリズムが、人為的な温度管理でゆがめられてしまうと、計画的なブリーディングは望めなくなります。

また冬場に加温をした場合、スムーズな産卵活動を行ってくれないことが多く、寿命も極端に縮まります。
ねずみなどと違いシマリスは冬眠する小動物として知られますが、他の小動物の４倍の寿命を持ちます。クワガタも冬場はしっかり越冬させ、 「越冬する（休む）時期」と「活動する時期」をしっかりと区別し、管理してあげてください。

（３．）の期間での観察は重要で、この期間でエサも食べずに寝てしまっているようなメスは、その後セットしてもすぐに産まない場合があります。こういう場合は、たとえ羽化から1年経過していようが産卵セットを組むのはひとまず見送ったほうがよさそうです。人の場合を考えても妊婦さんが食欲旺盛になるのと同じで、クワガタも交尾を済ませ産卵を控えたメスは、必ずよく動き回り、よくエサを食べます。

このように産卵に向け計画的に管理され、それぞれのチェック点を通過したメスは、産卵セットの仕方にもよりますが、セット後はほとんどの場合すんなり産卵をしてくれることでしょう。

産卵へ向けての計画的な管理をし、適切なセットを組んであげたら、あとは必ず産んでくれるという確信を持ち、途中でのぞいたり動かしたりしてストレスを与えず、暗い場所でしばらくほおっておきましょう。1ヵ月後、きっと期待したとおりの成果が出ていることと思います。

産卵を成功させるためには、産卵セットを組んだあとより、セットを組む前の計画管理と個体の状態に目を向けてください。スポーツ選手でも試合までの調整が大事なように、クワガタも産卵にむけての計画的な体調作りがとても重要なものだと思います。